前編より続きます。
確かに私達は今日、マイカーに乗り高速道路を使用し、容易に遠方へ遊びに行くことが出来るようになりました。
しかしそういった交通網の利用は、年に何度あるでしょうか。
私達は実際のところ、どの程度の恩恵を受けているのでしょうか。負担している税額に見合っているでしょうか。
一番恩恵を受けているのは、結局のところ、
「整備された交通網があるからこそビジネスの成り立つ、大企業」
ではないでしょうか。
すなわちAmazonのような大手通販業者や、彼らの商品配送を手がけるヤマト運輸のような企業が、その典型です。
デフレ・スパイラル
彼ら大手企業が地方の隅々にまで営業の手を拡げた結果、日本経済はどのように変化したのでしょうか。
まず私達一般消費者は、
「よそで生産されたより良い商品を、より安く手に入れることが出来るようになった」
というメリットがあります。これは非常にありがたいことです。
しかし一方で、
- 力のある企業へ、富がどんどん集約される構図が出来上がった。
- 反対に地方の中小零細企業は、次第に富を奪われる構図が出来上がった。
- 地方経済は右肩下がりとなり、一般消費者の家計も次第に右肩下がりになってきた。
- それらがデフレ・スパイラルを生んだ。
といったデメリットを被っているのです。ちょっと長い目で見れば、私達一般消費者にとっては致命的なマイナスとなっているわけです。
その先にあるもの
これが正に、現在のAmazonとヤマト運輸の状況に繋がります。
Amazon本体の売上は右肩上がりですが、そこに商品を供給する生産者やメーカーは、実に熾烈な営業を展開し血みどろの争いを繰り広げています。
その配送を担うヤマト運輸。
元々積極的な企業努力を続け成長してきた会社ですが、近年はAmazon等の影響でそれも追いつかず、そのしわ寄せが従業員に。・・・・
配達1件あたり10円という、子供の駄賃に等しい(笑)インセンティブを貰うのみで、早朝から深夜まで過酷な労働を強いられているようです。
正に奴隷そのものです。無理を続けて体を壊せば、使い捨ての憂き目に会います。
自由主義経済社会の「縮図」
この問題は、何もAmazonやヤマト運輸に限った話ではありません。全業種、概ね同じ状況が見られます。
- 敗戦後の日本政府は、国土全体に画一的な経済政策を適用した。
- 過度の交通網整備を行い、大企業にとってビジネスし易い環境を整えた。
- その上で自由主義経済の原則を徹底追求。
- 地方経済が細り、私達一般消費者の財布も痩せてきた。
- 結果、勝ち残った大企業さえも苦境に陥りつつある。
- そのしわ寄せは、大企業の従業員(=私達一般消費者)にまで及ぶ。
Amazonやヤマト運輸の問題は、正に「自由主義経済社会の縮図」である、と言えます。
この、負のスパイラルこそが、自由主義経済社会の成れの果てなのです。
「win-win」ではなく「収奪」
幸田はビジネスコンサルして、
「商売とはwin-winの関係を構築することだ」
というポリシーを持っています。
顧客とwin-winの関係を築く。どちらか一方のみがトクする取引であってはいけない。
さらには自社と従業員、顧客企業とその従業員の関係もまた、win-winであるべきだと思っています。これは企業経営者のモラルでもあります。
ところが自由主義経済原理というのは、本質的にwin-winではないのです。
- どこかを草刈り場とし、時には顧客を騙したり脅したりしてまで富を吸い上げる。
- 次々と新たな草刈り場を求め続ける。
- いよいよ草刈り場が尽きれば、ひとつの巨大市場内で熾烈な生存競争を繰り広げる。
そこにはwin-winの関係など存在しません。
自由主義経済原理とはすなわち、本質的にwin-winの成り立たない世界なのです。
後編へ続きます。