世襲制が「悪」で、能力主義に基づく職業選択の自由が「善」!?

2016/02/26歴史ってすっげ~面白い, 毒舌企画!! 「常識のウソ」

学校では江戸時代を、
「将軍様やお殿様が庶民を支配する、個人の自由を大きく制限された暗黒の時代だった」
というイメージで習いました。
「年貢は五公五民から六公四民。武家階級に庶民が支配され苦しんだ」
と。
 
おまけに毎週のように時代劇で、悪代官が悪徳商人とつるんで病気のお父っつぁんと可愛い娘を苦しめるので(笑)、江戸時代のイメージ悪化に拍車がかかります。
しかし本当のところはどうなのでしょうか?

まず、重税というのはウソです。
実は、江戸時代の課税対象者は商人、地主、網元といった有産階級のみでした。資産があり、かつそれをお上から保証、保護されていたからこそ、その見返りとして年貢を払っていたのです。
番頭以下の雇われ人、それから小作、網子といった、今で言うサラリーマン階級は年貢を払っていません。
 
しかもその課税対象である地主、網元も、五公五民どころか最大でも3割程度の負担率だったようです。
今日の日本の税負担率はなんと、年間所得の実質7割といったところです(!!) アナタの稼ぎから直接あるいは間接的に、7割も巻き上げられています。実は江戸時代の方がずっと、税負担率が軽いのです。
 
商人は多額の税を拠出させられていました。
しかしそれは、様々な特権を与えられ、儲けを約束された見返りでもあります。公共事業や災害発生時など、ここぞという時に多額の献金をさせられています。そういうシステムだったのです。
 
だからこそ江戸時代は、徳川幕府も大名も貧乏でした。どちらも家計は常に火の車、借金まみれでした。
つまりここが西洋の専制社会と異なる部分ですが、支配者が一方的に被支配階級から収奪していたわけではないのです。
 
なぜか。
そこに、支配者としての高い倫理観が存在したからです。将軍、高官、大名それぞれが、それぞれ支配者としての、
「庶民の生活を守る。庶民の幸と富を守る」
という倫理を、子供の頃から養っていたからです。
また被支配者階級も同様に、
「お上に守られる側」
としての倫理を、子供の頃から養っていました。
 
今日、
「江戸時代は身分が固定され職業選択の自由がなく、不幸だった。職業は本人の自由意志と能力に基いて選択されるべきだ」
とされています。そういう価値観が常識になっています。
 
しかしそれが本当に正しいのでしょうか。適切なのでしょうか。
 
今日も、本当の意味での能力主義ではありません。
単にインチキ教育システムによって個人の能力開発が大幅に制限され、その中で勝ち残った人々が「優秀」と定義されるに過ぎません。それらほんの一握りの勝者のみが、事実上の支配階級に「使われ」ます。
 
それから「職業選択の自由」も、現実に存在するのでしょうか?
一部の「本当に優秀な人々」を除けば、大半は100ヶ所近く入社試験を受け面接を受け、やっとどこかに雇われ「使われ」る身分を得ます。自由選択とは呼べない現実がそこにあります。
 
また社会情勢が次第に苦しくなっていた今だからこそ、よく解ることですが、事実上の世襲制が復活してきています。
政治家も世襲。財界も世襲。私達一般市民の就職にしても身内のコネが幅を利かせています。
 
親が優秀であれば、より良い教育環境が与えられ子も立派に育ちます。そしてコネで良いポジションに潜り込む。ダメな親なら子に最低限の教育環境しか与えられず、大したコネもない。
これは実質的世襲制だと言えます。「能力主義に基づく職業選択の自由」というのは、大半の人々にとっては幻想に過ぎないわけです。
 
今、改めて「世襲を基盤とする江戸時代の社会」を考えると、実は極めて合理的であったことが判ります。
 
身分と家業が固定されているからこそ、人口が増えようが減ろうが産業バランスは安定していました。
これは社会の持続性を担保します。
 
逆に言えば今日の社会は、産業バランスが最適化されていないからこそ、少子化に怯えなければならないのです。ただでさえ人口過剰なのに、
「移民を受け入れてでも人口を増やせ!!」
という暴論がまかり通るわけです。また産業によって富に偏りが生じます。
 
身分と家業が固定されていると、資産の毀損も最小限で済みます。
「子が家業を継がないから、資産を処分するしかない」
といったケースが極めて少ないのです。そして資産、スキル、倫理などあらゆる要素が子孫に継承されます。
これは大きなメリットとして、もっと評価されるべきではないかと幸田は考えます。
 
今日の社会の問題点を、江戸時代と比較し考察すると、いろいろと見えてくるものがあります。
今日の社会を改善しようと思えば、その処方箋は江戸時代をはじめとする、日本の歴史の随所に存在するのです。日本の歴史に学ぶべきところが多々あるのです。

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