「credit」 実態なき単なる信用力情報が現代経済の基盤 - 中編

2020/05/24政治・経済

前編より続きます。
 
 
「credit」について、上手く解説している動画がありました。まずはそちらをご覧下さい。
なお「30分で判る」というタイトルですが、多分30分では咀嚼出来ません(笑)
 

 
なかなか良く出来た動画ですが、最も本質的なリクツには踏み込んでいませんね(^^;

 
 

昔の経済は単純明快だった

動画内のグラフで、creditは細かい波動の連続であることを表現しています。
前編で解説したように、creditとは信用力情報です。個人であれ企業であれ、あるいは各国政府であれ、信用力情報は日々リアルタイムに変動します。だから一定ではなく、波動を成すのです。
かつそれは、一瞬にして消滅するという本質的性質を有するのです。
 
経済とは、社会におけるあらゆる取引の総和です。
取引とは本来、アナタが持っている現金と、商品・サービスを交換する行為でした。
ですから昔の経済といえば、あらゆる人々の持つ現金の総額の範囲で動いていました
 
しかし現代経済は、そうではありません。
 
 
 

現代経済は信用力情報の総和

銀行は個人に対し、
――この人はそこそこの企業に既に5年勤続し、今後も定年までしっかり勤め上げそうだ。だから毎年100万円ずつ、30年にわたって返済する能力があるだろう。よし、30年2,000万円の住宅ローンを決済しよう。
と判断します。これがcreditです。
 
また企業に対しては、
――この企業は堅実な経営をしており、毎年ン億円以上の売上を上げている。今後数年、毎年ン千万円の返済能力があるだろう。よし、5年ン億円の融資を実行しよう。
と判断します。これがcreditです。
 
各国政府も同じ事です。誰もが、
――この国は毎年ン兆円の税収がある。今後数年、毎年ン兆円の返済能力があるだろう。だからン兆円までの負債に耐えられるに違いない。
と予測します。これがcreditです。
 
そういった判断――creditつまり信用力情報――の総和が、現代経済を形成しているのです。
 
 
 

将来の収入を先食いする現代経済

では、現代経済は昔の経済とどう異なるのでしょうか。
結論を言えば、
「将来の収入まで見込み、将来の返済能力を査定した上で、今、その総額を支払可能額と見做す」
というわけです。
 
昔の経済は、たった今保有する現金だけで動いていた。しかし現代は、
「保有する現金プラス、将来の収入まで先食いして動いている」
というのが実情なのです。
 
だから実態以上に膨らんでいるのです。
また今回のCOVID-19騒動のように不測の事態が発生すれば、将来の見込みが変化しますから、途端にcreditが収縮したり消滅したりするのです。
 
繰り返しますが、現代経済は実態なきcredit(信用力情報)が基盤となっていますから、そのような本質的リスクを有するのです。
過去のバブル経済崩壊だとかリーマンショックだとか、今日のCLO破綻リスクによる金融危機だとか、全てはそこに起因します。
 
 
 

何故、お先真っ暗なのか

というわけで、カンの良い方はもうお解りでしょう。
 
現代経済は一見羽振りが良いですけれど、その実態は、
「将来の収入まで先食いし、膨らましている」
というわけです。
 
ちなみにそれを支えるのが、金融理論です。
銀行の自己資本比率だとか中央銀行の預金準備率だとか、近年よく耳にするレバレッジなどといったルールは、
「creditという、実際の手持ち現金より膨らんだ資金需要に、金融機関が応じるため」
の仕組みだと言えます。
 
話を戻しますと、現代経済とは将来を食い潰しているのです。
今後も順調に人口が増え、経済活動がますます盛んになる……という前提であれば、持続可能です。
 
ですが現実は異なります。
先進国の人口は頭打ち、あるいは減少傾向にあります。大航海時代及び植民地主義の時代とは異なり、新たな市場開拓も先が見えています。
各国、及び各国の企業は熾烈な経済戦争を続け、互いに疲弊しています。
 
つまり現実は、順調な人口増も経済規模拡大も困難なのです。であれば、現代経済は持続不可能なのです。
にもかかわらず、次々と将来の収入まで先食いする経済理論が未だ肯定されている。
おまけにその基盤たるcreditは、一瞬にして消失するリスクを孕んでいます。
 
だから、将来が見えないのです。お先真っ暗なのです。私達一般市民誰もが、将来に対する漠然たる不安を抱えているのです。
 
 
後編に続きます。

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Posted by 幸田 蒼之助