「震災列島」は新たな日本の在り方を示唆する
震災列島
石黒耀著
著者石黒耀氏の処女作「死都日本」は力作でした。
火山おたく、いやおたくのレベルを超えた知識を有する主人公が、霧島の破局噴火(ウルトラプリニー式噴火)に直面し嫁さん救出に奔走する、というあらすじ。西日本がほぼ壊滅します。
間一髪、噴火直前の霧島を逃れ、持てる知識を駆使して迫り来る火砕サージを避け、丁度私の住まい近辺を逃げ回ります。迫力満点です。
そして孤立してしまった嫁さんの勤務先にどうにかたどり着き、共に救出されます。
ラストが奮ってます。いわゆる英雄的な首相の活躍により、破局噴火のため破綻目前の日本を一発逆転、鮮やかに復興へと導きます。いやもう、本当にボリュームのある小説です。
で、この「震災列島」が石黒氏の2作目にあたるようです。ようやく手に入れて、読みました。
あらすじが、あんまりなんですよね(^^;
いきなり、主人公の娘がヤクザに寄ってたかって強姦され、それを苦に自殺するところから始まります。
時あたかも、東海地震の前兆が続き、いつ発生してもおかしくないという状況。主人公は親爺さんと共に、この東海地震を利用してヤクザに復讐しようと企むわけですよ。
胸の痛むような動機に、マンガじみた復讐シナリオ。
少なからず、がっかりしつつも読み進めるものの、そこはやはり石黒氏。深いテーマを幾つも提示し、充分に満足させてくれました。腹一杯でございます。
自浄作用の不完全な組織は、必ず腐るそうです。
現代法治主義だけでは自浄しきれません。それこそホリエモンも語っていますが、日本における法治主義は、所詮借りモノのシステムに過ぎず、運用にも問題があります。
本来その、不完全な自浄作用を補うのが宗教的モラルだと言うのですが、日本の場合、この宗教的モラルもどこかへ吹き飛んでしまっているわけですよ。
そりゃまあ、政官財、あらゆる組織が腐敗するはずですね。
かつ腐敗のタネとして、応用科学の濫用を著者は指摘します。
応用科学だけでなく自然科学に目を向けよ。自然の摂理に耳を傾けろ、と。
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