宗教団体を解散に追い込むなんて、すっげー難しいんだぞ
幸田はガキの頃からテレビと縁が薄い。
あまり必要性を感じなかったので、地デジ移行を期にテレビから完全に離れた。
なので安倍元首相暗殺事件発生後のニュースは、ネットからの情報ばかりである。テレビでどう報道されているかは、ネット経由での噂しか知らない。
そうして断片的に得たマスコミの動向、姿勢は、どうにも不可解な事だらけである。
まず、暗殺事件発生の第一報。
犯人・山上徹也は、自作の散弾銃で安倍氏を攻撃した、という。
はあぁ!?
第一報でまず、首を捻った。
散弾銃での暗殺を企てるなんて、まずそこから不可解（ましてや犯人は元自衛隊員なのに）だが、なぜ安倍氏のみ被害を被ったのか。
なぜ周囲の人々は無傷だったのか。
犯人は一体、どこから安倍氏を撃ったのか。余程至近距離から撃ったのか。
それしか考えられないが、じゃあSPは何をしていたのか。犯人が接近しても全く気付かなかったのか。
その後、治療にあたった医師団の発表と、警察の公式発表（司法解剖結果等）が、なぜあんなに乖離しているのか。
参議院議員・青山繁晴氏も述べているが、体内から散弾銃の弾が見つからなかった、というではないか。
そして銃弾がどこに当たり、体内をどう巡ったのかも、医師団の説明と司法解剖所見では異なるという。
どういうこと!?
本当に、犯人は山上徹也なのか?
幸田は事件発生早々から、胡散臭さを感じていた。情報が色々と出る度に、その思いを強くした。
マスコミが、いやテレビが、その辺をしっかり分析し報じていたとは思えない。そういう記事も噂も見当たらなかった。
一体、何やってんだ!? アホ過ぎるだろ。
まあ、ただそこは今回の本題ではない。
気になるのはマスコミの論調である。
なぜ、犯人とされる山上徹也に同情する!?
安倍氏がどんな人間であれ、暗殺を行った山上が悪いのは厳然たる事実ではないか。
山上にどういう個人的事情があろうと、不法に人を殺めたヤツをあまり咎めないとは、どういうことか。
山上同情の気運が興り、彼に支援金などが集まっているのだとか。
はあ!?
早々から山上糾弾の論調より、統一教会バッシングへと向かったのは、なぜか。
いかに山上の犯行動機に統一教会が関わろうと、今回の犯行とは直接的に関わっていないではないか。
意味がわからない。あからさまなスケープゴートではないか。
一番不可解なのは、統一教会に解散命令を出せ、との主張。
アホか!!
その昔、オウム真理教事件というのがあった。
1990年代半ば、幸田が大学生時代の話である。現在のおっさん世代以上は皆、知っている。
つまり新興宗教団体オウムが、幾つかの反社会的事件を引き起こした。極めつけが、サリンによる地下鉄テロである。
当然、オウムを潰せとの世論が轟々と沸き起こった。が、なかなか進まなかった。
何故か。――
信者の罪を、教祖や教団全体の罪であると証明するのが難しいのだ。
「一部の者達が、教祖様の教えや教団と関係なく勝手にやったことですよ～」
と反論されたら、解散になど追い込めない。実行犯だけを有罪にして、終了。そんな事は小学生でも解るリクツだろう。
日本国憲法が「信教の自由」を明確にうたっているため、宗教団体の扱いになおさら慎重にならざるを得ない、という事情もある。
なので、
- 教祖が犯行を命じた、という明確な証拠があり、
- 宗教団体が組織ぐるみで犯行を計画、準備し、
- そして実行部隊が動いた。
と、しっかり証明されなければならない。多数の証拠、多角的な証拠が必要なのだ。
それが困難なため、あのオウムでさえ、解散命令が出るまでに何年もかかった。
幸田は一応法学部出身だったので、あの時の状況をよく憶えている。
ゼミでは、
「オウムは宗教法人法による解散が妥当なのか。それとも破壊活動防止法を適用すべきなのか」
といった議論が度々為されたものである。
当時の法学部生ならば誰でも一度は扱っただろうテーマなのだ。その厄介さは大概誰でも知っている筈なのである。
マスコミには法学部出身者が多数在籍する。幸田と同世代の法学部出身者が、管理職クラスに沢山居る筈である。
ということは、統一教会に解散命令を出すことがいかに難しいか、知らない筈がない。
にも関わらず、なぜ安易に統一教会バッシング、解散せよという世論喚起に走るのか。解散命令を出すのがいかに難しいか、触れないのか。
「自民党の利害に関わるから、解散させようとしないのだ」
などといった、論理の捻じ曲げをやるのか。
幸田は何も、統一教会の肩を持つ気はない。あんなもの、無い方が良いに決まっている。
が、マスコミの真意が解らない。
敵を定め、政府自民党が敵とズブズブであると明かし、政府自民党を間接的に攻撃したいのか。単に、それだけが目的なのか。
どうにも不可解である。
